2012年8月2日木曜日

Rise of the Thorns: Designing Zyra 抄訳




Zyra リリース直後の開発者インタビュー抄訳
http://na.leagueoflegends.com/news/rise-thorns-designing-zyra


我々開発者やデザイナがZyraを発案してから開発までの過程で、やはりいくつかのいい話や面白い課題などが期待されているものだ。Zyraは実に1年間におよぶ製造過程を経て現在の姿のチャンピオンとなった

2名のZyraの開発者、チャンピオン主開発者のRyan "Morello"とBradford "CertainlyT"に加わってもらい、このチャンピオンがどういった過程でデザインされていったのかの詳細や、いかにして生まれたのかの内情について語ってもらおう。


Riot:まず最初に。どこからZyraの開発を始めたの?


Morello:我々は長い間アーキタイプに注目してきた。多分1年くらい。彼女のことは最初は「Plant Girl」と呼んでいた。一番最初の段階として、ニンフやドライアドといった古いファンタジーからの妖精類とLeague Of Legendsの妖精類は一線を画するものにしたかった。ドライアドは「やあ、自然の力でHealするよ」的な柔らかくて飛んでるような妖精のイメージで、これは別段新鮮なコンセプトじゃない。じゃあ自然の力のどういったところがカッコいいか? ツタで獲物を締め上げる人喰い植物だ。カッコいい。自然の力のこういう鋭利な感じのところをドライアドに盛り込んだらどうだろう?

Zyraは多人数の開発者が関わったチャンピオンでもある。最終的に3名のデザイナが彼女の設定に関して手入れを繰り返してきた。


Riot:CertainlyTはZyraにデザイナとして最後に関わったけど、彼女を仕上げる際に特別だったところは?


CertainlyT:Zyraのプロジェクトに入った時、「種」(訳注:スキルのW)の方向性について、大きすぎる問題が山積みだった。それを「植物」にする選択肢が多すぎたんだ。たくさんの種類の違う植物を使える、ということは使用者にたくさんの選択があり、使った後にその選択がよくなかった、と常に感じさせる原因になっていた。これは本当に圧倒的だった。結局「種」自体に効果時間の間、視界を確保する、という機能を与えたのが大きかった。


Riot:
それがどう関係するの?


CertainlyT:視界を得る種を植えることで、使用者がそれを植物にするか否かの「決断ポイント」になるんだ、ということを強調したかったんだ。この方法なら常に何らかの機能を提供し得るから、使用者が種を無駄にしたと感じることも少ない。


Riot:
Zyraのスキルセットとかは開発中どれくらい変わったの?


CertainlyT:たくさんのバリエーションをボツにしたよ。主にZyraのバランス上の理由で。大量すぎる植物がスキルセットにあるのもクリーンな感じじゃない。単に大量の植物を出す、というだけじゃなく。植物を操作することで、使用者に「賢い動きをした」と感じさせる深みを出したかった。今の彼女を彼女たらしめている複雑なスキルセットも、プレイするのに十分な意味があってこそだ。


Morello:
キャラクター性を押し出すために植物に影響するための手段をいくつか削ったりもした。


CertainlyT:実際、Zyraには最初、もっと大量の改良案の候補があった。その中から、例えば射程を伸ばしたり、種のスキルを与えたりして、植物が一緒にいなくてもちゃんと仕事が出来るようにした。これは彼女のなんでもできるっていうキャラクターの方向性のなかで、大量の植物をぶち当てるのと、戦略的で面白い植物の使い方をするのとの間でのバランスをうまく取るうえで大事なことだった。全ては、いかにクリーンに彼女のプレイを良くしていくか、そして、いかに種のスキルからくる選択にプレイヤーが後悔をしないようにするか、というところに尽きるだろう。「どう」使うかと「どれを」使うかの差といってもいい。


Morello:Zyraの能力を作っていくうえで、本当にたくさんの決断があった。


CertainlyT:Zyraは、みんながメイジをプレイする際にだいたい想定するアプローチや、ゲームに対しての考え方と、非常に大きくかけ離れている事に気をつけてほしい。Zyraはコントローラ・タイプとして、ミニオンを掃討している際も位置情報を把握して襲撃に備えるプレイもできるし、超アグレッシブにプレイして襲撃して、敵の逃げる方向に植物を設置して2種の強力なダメージ源で捉えたりもできる。トリッキーにプレイして罠設置系の防御的なメイジとしての役割も果たせるだろう。逃げる彼女を追跡する敵には植物のフルコースが待っている。

Zyraの植物のプレイ順にはコンボになり得る要素がたくさん盛り込んである。プレイヤーによってそれぞれ違ったプレイになってくるはずだ。


Riot:
チーム内の役割としてはどういうところを想定していた?


Morello:まずアーキタイプがあって、そのアーキタイプとして筋が通っている役割が与えられないといけない。Zyraみたいに汎用性のあるチャンピオンになると、ちょっとそこから外れた役割も十分考えられる。ボトムでのサポートZyraはすごく強力なことがわかるだろうし、JungleZyraは種のおかげで素晴らしいカウンタージャングラーであることがわかるだろう。本当に汎用性が高いんだ。他のAPチャンピオンと違って毎度同じ銃(リボルバー)で戦闘に出てきたりしない。逆に他の純粋なAPチャンプと1対1でやりあったりもしない。能力とコンボでどうにかする必要がある。プレイングが重要だ。


CertainlyT:構成が決まったあとは、彼女がどこによく行きそうか、というところに注目した。Midレーンだ。これこそ我々がもっとも制御せねばならない部分だった。しかし、完全に引き算的な制御をしてしまっては彼女のゲームプレイ自体が危機にさらされることになる。Midに行くようなプレイヤが彼女でどういったプレイをするか、という予測が必要だった。

Zyraをデザインしていて一番ハッピーだったのは、彼女が実際のゲームプレイで「この役割だ」という明確なラインを持っていないことだった。便利さと楽しさを彼女に与えることができて、しかも役割の分類に縛られていない。


Morello:OriannaやBlitzcrank、Luluの延長線上にいるといってもいい。汎用性があって自由で、ゲーム内のいろいろな役割として生きていくことができる。その汎用的な能力と複数のプレイスタイルは、プレイヤに「このスキルの組み合わせでいかにして戦いに影響を及ぼすか」をクリエイティブに考えさせることにつながる。

逆に、Dariusなんかは常にTopレーンのファイターとして相手を殺しにかかる。そういうタイプになるよう作ってあるからだ。プレイヤーはたくさんのタイプのチャンピオンを求めている。


Riot:種のスキルのバランスについては? 彼女の主力だよね?


Morello:
ゲーム内のすべての行動にはコストがある。Zyraの種は「機会」のコストがあるといえるだろう。2つしか種をスタックできない時は、機会に応じて使うか、使わないかの選択がプレイヤに委ねられる。もし2つ一気に敵の近くに置いて即植物化させたとしたら、2体の植物が戦闘する代わりに、ジャングルからのGankを防いだり偵察したりといった他の用途には種を使えないわけだ。もちろん種は時間が経てばまた使える。しかし、その間は種を使うことからくる彼女の「機会」に対する力は限られることになる。


Riot:Zyraを使う上でどういったところが難しいと思う?


CertainlyT:使いやすさにも十分に気を使った。我々はZyraを多様なプレイスタイルに応じられるようデザインした。Zyra初心者(あるいはあまり洗練されていないプレイヤ)は、とりあえず種を置いてみて、その後に敵と種に同時に当たるようスキルを撃って両得を狙ってみるだろう。訓練されたプレイヤはさらに難しい操作を試行し、コンボを打つシステムに近くなってくる。これは完全にプレイスキルだ。両者の間をとって、置いた種から一旦離れ、後で戻ってきた時にそこにスキルを打つというスタイルもあり得る。どちらにしても、システム的な難しさについてはさほど心配していない。

Zyraというチャンプが目指すゴールは、プレイヤが彼女と一緒に成長し、彼女の能力を学び、もっとも最適な、ポテンシャルのあるコンボを見出すことにある。敵を罠にかけたり、突然植物を起動したり、種や植物の配置で集団戦の流れを掴んだりできたとき、プレイヤは自分の手腕をよりいっそう実感することができる。彼女はプレイヤが新しいことを学ぶたびに、確実にそれに応えてくれるはずだ。


Morello:Zyraは特にこのゲームをもう少しチェスっぽく頭脳プレイしたいプレイヤにとって魅力的に映るだろう。Zyraの理想とするところは、レーンにおいてプレイヤが相手の考えを読み、裏をかけるようになることだ。もちろん彼女にはいくらかの良いバーストダメージや興味深い能力を持ってはいるが、彼女が本当に輝くのは、一歩引いて状況を読み、ベストな行動のとり方を考えた時だろう。


CertainlyT:順当な予測というのは当然対戦相手もしてくる。そのうえで我々はE(方向指定スネア)の速度を遅くし、ヒットした時の恩恵を増やしたりもした。当てた時プレイヤは自分がすごく懸命な判断をしたと感じるだろう。


Morello:だいたいにおいて我々は「少ないことは豊かなことだ」という方向性でデザインを進めてきた。実際、プレイヤはスキルについて弱いと思った面を強みにすることができる。AniviaのFlashFrost(Q)がいい例だ。Aniviaのプレイヤはこのスキルが大好きだが、その理由はこのスキルの弾速が遅いからだ。当てた、という実感が得られ、当てられた敵もそれを感じる。さらに、もっと難しい当て方をした時はもっと恩恵が得られる。長いスタンが入ったり、大きなダメージが入ったり、といった具合だ。

Zyraは自分の頭で考えなければならないチャンプだ。移動と行動を計画し、考え、実行に移して初めて結果が得られるだろう。


CertainlyT:もちろん、計画そのものの力も得られるはずだ。例えば、もしZyraがトップレーンにいてGankをされそうなときに茂みに種を置いて事前にそれを察知するといった具合だ。敵のジャングラーは種を踏んだ瞬間に見られている事がわかって退散し、Zyraは自分の仕事を続けることができる。これはジャングラーの時間を消耗させたことにほかならない。プレイヤのちょっとした計画性が戦場全体の情報戦に大きな恩恵をもたらすだろう。


Riot:Zyraを相手にして戦う場合はどう? プレイヤは彼女にどう接すれば、戦場でひっかけられたり行動を支配されたりせずにすむ?


Morello:
種を決め打ちで使っている場合は、Zyraは敵の出方を伺っている。Zyra側としてはとりあえず種をおいてみて、相手の反応を観察しているんだ。種は敵チャンプが踏むと壊れる、ということを覚えておかないといけない。逆に攻撃のターゲットには取れない。だから、近くに寄って踏んづけないといけない。しかし、そのために近づくと、スキルや植物の攻撃をもらってしまうことになりかねない。


CertainlyT:
我々は根本的に公正な感覚のゲームを作って行きたいと思っている。プレイヤはZyraに対しての反応として種を踏み潰しにいってもいいが、Zyra側も種を置くことによってプレイヤにプレッシャーをかけることにつながる。


Morello:
種を踏むと壊れるという要素は、Zyraというチャンプの主題としても意味の有ることだ。


CertainlyT:種を踏むという要素は、純粋なバランスの目的の上では必要なかったことだった。もともと最初は種に対してはなにも影響できなかった。しかし、Zyraはあまりに簡単にプッシュが可能で、それに対して取りうる対策がない、とプレイヤに感じさせることになった。種を踏むと壊れるようにしたおかげで、彼女を相手にして戦う際も、種に対する対策を取れるようになった。しかしそれは、踏もうとして近づくプレイヤが危険に晒されている、ということでもある。種に対する行動は常に心理戦を伴うようになったんだ。


Morello:種を踏むという要素は、時間リソースに対する攻撃でもある。相手はただ単にそこらを走り回って種を踏んでまわる、ということができない。Zyraは常にそれらを植物にする機会があるからだ。


Riot:Zyraを開発する上で予測しなかったことや面白かったことは何かある?


CertainlyT:
開発の初期段階で、彼女の植物を別のチャンプのモデルで代用していた時があった。例えばQの植物がAsheだったりとか。急に地面からAsheが生えて敵を撃ち始める。Eの植物はJarvanで、槍で相手をつつき始めたりしてた。


Morello:プロトタイプの植物はほとんどそんな感じだったんだ。Morganaとか。地面から生えてきて「Morganaする」。地面からSionが生えてきて走り回って敵を叩き切ろうとしたりもしていた。最終的にそういう動きまわる植物の要素は意図的に排除したよ。彼女の植物は究極的にはその場にとどまっていることにこそ意味があると思ったからだ。


CertainlyT:
小さいSionやAsheやMorganaがそのへんを走り回ってる絵面は、想像つくだろうけど、ゲーム画面としてすごいカオスだったよ。


Morello:Zyraの開発は、とてもたくさんの選択肢やコンセプトの中から、いかにしてうまくいくものを見つけ出すか、というユニークな過程だった。そういったたくさんの要素の中でも、プレイヤに賢明さを感じさせ、特別な瞬間を感じさせる、という方向性が一番合っていた。素晴らしい感覚だよ。正しい判断ができた時、特に強くそう感じられるはずだ。